武器を持って敵に立ち向かう、RPGみたいな仕事。
営業と言っても、モノを売るだけが仕事じゃない。ひとつの加工を効率的に実現するために、さまざまなケースを想定しながら、そこにある課題をひとつずつクリアしていく。
加工技術についてどれだけ深い知識を持っているかは、営業担当にとって最大の武器です。とは言え、扱う工具の数は数千種類。必要な知識や知恵には際限がありません。公式もマニュアルもなければ、ゴールも定めにくい仕事。
「じゃあ、どこまでこなしたら『一人前』なんですか?」
入社3年目の若手社員Aが、12年目の先輩Bに聞く。これまでの経験から得た仕事のコツ、スタンス、成長感。さらに春日鋼機で目指すべき「一人前の営業」とは?
若手社員A
入社3年目。加工技術についてまったく知識がない状態で入社。「塑性(加工技術のひとつ)」を「生き返ること(=蘇生)」だと勘違いしていた。専門用語や高度な加工技術にアタマを悩ませながらも、持ち前の親しみやすいキャラクターでお客様との距離を縮める。
先輩社員B
入社12年目。社内では中堅的な役割を果たし、大手のお客様を一手に引き受ける。なるべく先回りして新しい情報を提供するお客様へのホスピタリティと、「知ったかぶり」をしない正直さがウリの営業担当。
若手社員A | この間、工具を納品しに行ったときお客さんに聞かれたんですよ。「これって何ケツ?」って‥‥。わからなかった。お客さんに教えてもらったんですよね。 |
先輩社員B | 「ひとつで何回穴が空けられるか?」っていう工具の耐久性を表す数字のことだな。 |
若手社員A | 冷静になって考えたら、どうしてそんなことがわからなかったんだろうと思うと‥‥チョット悔しかったッス。 |
先輩社員B | お客さんの口から突然専門用語が飛び出すのは日常茶飯事だし、オレもオマエくらいの頃は答えに詰まることもよくあったよ。現場で起こってる加工の問題って、その場その場でちがう。場数を踏んでないうちは知識も浅いから、武器を持たずに敵陣へ乗り込んで行ってるようなモンだよな。 |
若手社員A | そうッスよね〜。現状の加工についてはお客さんの方が何倍も詳しいから、教えてもらいながらこっちが提案できる策を、一生懸命練る。お客さんのところへ行くたびに目の前に現れる敵を、1匹ずつ倒していく感じ。 |
先輩社員B | わかるわかる。オレも手探りで1匹ずつやっつけてきたわ。12年やってみて手持ちの武器も少しは増えた。ようやくやっつけ方がわかるケースがちょっとずつ増えてきたかなあ。 |
先輩社員B | オレはもう入社して12年目だけど、いまだに知らない加工にぶち当たることはたくさんある。 |
若手社員A | 先輩でも、あるんスか!? |
先輩社員B | めちゃくちゃあるって!加工ってホントに奥が深いから。たとえば単に「穴を空ける」にしても、大きさとかカタチとか深さとか‥‥ |
若手社員A | あと、空ける速さとか角度とか。 |
先輩社員B | そうそう。条件によって商品を選ぶし、同じメーカーさんの商品でも種類はひとつじゃない。モノづくりも日々進化してるから、新しい工具も手法もどんどん出てくるし、それをどう使うか?っていう選択肢だっていくつもある。 |
若手社員A | お客さん先で何を聞かれても即答できるようになるには、何年かかるんだろう‥‥。気が遠くなりますよ! |
先輩社員B | 「何年」っていう単位じゃないんだろうな。10年やったら一人前でもないし、20年続けたら完璧か?って言ったら違うだろうしな。 |
若手社員A | これができればOKっていうのが「ゴール」だとすると、ボクらの仕事のゴールってどこなんですかね。 |
先輩社員B | そもそも仕事に「ゴール」があるのかはわからないけど‥‥今の規模で敢えて言うなら「新規工場の立ち上げをすべてひとりで請け負う」かなあ。 |
若手社員A | うわぁー‥‥。その長い階段、登るかどうかチョット考えちゃうなあ。 |
先輩社員B | 登ってみると、見晴らしが良くて楽しかったりするんだろうけどな(笑) |
若手社員A | お客さんから尋ねられて現場で答えられないことがあるって言ってましたけど、そういう時どうするんスか? |
先輩社員B | オレがいつも肝に銘じてるのは、知ったかぶりだけはしないことかな。「今すぐは答えられないけど、言われたことはちゃんと実現するので時間をもらえますか?」ってお願いする。 |
若手社員A | 知識が足りてないことを、取り繕わないってことですね。 |
先輩社員B | 対応のスピードだけのためにその場をしのいでも、結局お客さんのためにはならないからね。自分のコトを信じてもらってナンボだから。 |
若手社員A | 一度宿題として持ち帰らせてもらって、会社に戻って経験豊富な先輩たちに聞く! |
先輩社員B | ‥‥のもいいけど、なんかプロセスが抜けてねーか? |
若手社員A | あ。そうッス。いつも言われるんですよね。「何でもかんでも聞くな」って。ボクの悪いクセなんです‥‥だって先輩たちみんな、物知りだから。 |
先輩社員B | ウチは基本的に放任だよね。「まずは自分で調べろ」スタイル。カタログをめくって自分のアタマで考えて、それでもわからなかったら周りに聞く。 |
若手社員A | たしかに、教えてもらったことより、自分のチカラで解決した提案の方が記憶に残ってるわ。 |
先輩社員B | それが、あるとき課題に即答できるタネになってくんだよな。それが増えれば増えるほど喜ばれるし、頼ってもらえる。‥‥たださ、知識知識って言ってるけど、お客さんが求めてることはそればっかりじゃないんだよな。 |
若手社員A | どういうことッスか? |
先輩社員B | ほら、日が暮れてからお客さんが「アレ、急いで持ってきて〜」って連絡くれることがあるじゃん。ウチの人たちって、20時でも21時でも駆けつけるよね。 |
若手社員A | あぁそうですね。‥‥でもそれ、普通だと思ってました。 |
先輩社員B | みんなが普通だと思ってこなしてる空気が、春日の強みかもしれんな。 |
若手社員A | お客さんに頼ってもらうのは嬉しいし、頼まれたらなんとかして応えたいって思いますからねえ。 |
若手社員A | ボクがイメージするウチの仕事って、横に枝を広げた木なんですよね。タネを蒔いて芽を出して枝を伸ばして、その先の葉っぱを茂らせていく。 |
先輩社員B | 上に伸びるだけじゃないってことね。ウマいこと言ったな。 |
若手社員A | 1本1本の根っこの深さももちろん必要だけど、どれだけ加工技術の枝を広げられるかが大事、っていうか‥‥ |
先輩社員B | オマエ、わかってきたなあ。‥‥ってエラそうに言ってるオレも、まだまだ必死で階段登ってる最中なんだけどね。 |
若手社員A | ウチの仕事って、どんな人が向いてるんですかね? |
先輩社員B | すぐに成果を求めないで、自分で工夫しながらコツコツ頑張れるタイプの人には、楽しんでもらえそうだよな。 |
若手社員A | ウッ‥‥。耳がイタイ‥‥(笑) |